一昨日と昨日は、東北大学100周年の記念式典。工学部と東京の学士会館でそれぞれ講演をしてきた。このところ、講演は一切スライドを使わないという方針を採っていて、こちらのほうが自分としても気分が引き締まる感じ。まあもともと、作家でパワーポイントなどを使う方が珍しいのである。研究者の方も一度なんの資料も見せずにしゃべってみることをお薦めする。
東北大学では、今後の100年に向けて「井上プラン2007」という総長プランが発表されている。細かな内容については措くとして、私ならたとえば次のようなことを盛り込みたいということを書いておこう。
まずひとつ。東北大学って、お世話になった人に対する感謝の気持ちの表し方がとてもへたな大学だと思う。100周年を迎えることができたのは卒業生と在校生と職員、そして地元の人たちのおかげでしょう。100周年の記念式典をやるなら、まずそういった人たちへの心からの感謝を表すことから始めてもいいのじゃないだろうか。職員から寄附金が集まらないというけれどそれは当然のことで、寄附をしても現状では大学側の対応は画一的でちっとも嬉しくないし、誇りにも思えないのだから。「多くの方々と共に挑戦していくことにより、社会から信頼、尊敬、そして愛情を得られる大学として人類社会の発展に貢献」と書かれてあるけれど、まずは大学側が感謝し、他者を信頼し、尊敬し、愛情を持たない限り、そんなことは無理でしょう。「東北大学グランドデザイン」の中にはChallenge, Creation, Innovationと三つの言葉が掲げられているが、200周年までにはぜひそこにHospitalityを加えてほしい。
ふたつめ。今後、東北大学では医工学など異分野融合型の新研究体制を強化してゆくらしい。その一環として「国際高等融合領域研究所」というのを設立するのだとか。結構なことだと思うけれど、異分野融合をそういったひとつの施設に集約してしまうことが、「異分野融合という狭いジャンル」をつくってしまうことにつながるのでは? 異分野融合というのは何もそんな施設があるからうまくいくわけじゃない。今日からでも東北大学の研究者は異分野融合研究を始められるはず。
いまのCOEなどでも複数領域を横断するようになっているが、しっかり異分野融合できているとはとても思えない。まあ何回か他学部と一緒にセミナーをやって、外国に学生を送り出して、あとは学会や発表会をやるということでしょう。本当の異分野融合というのは、送り出される学生にも勇気が必要だが、その人を送り出し、また迎え入れる大学側にも真の勇気があってこそ始まるものじゃないか。私たちは人間なのだから、違和感を消し去ることはできない。ならば違和感を前提としたまま専門家同士が交流するということは、勇気と信頼の問題であろう。そういうことを、薬学や看護、介護の人たちはずっと経験してきたわけで、だからこそ自然科学の主流とは見なされなかった歴史がある。しかし異分野融合を目標に掲げるということは、東北大学はこれからの100年で、どの大学にも増して勇気を持ち続けるのだという意思表明と捉えてよいと私は思う。そもそもこの勇気は大学の名前にすでに刻まれている。「東京」大学や「京都」大学ではない、単なる一都市を冠した名前ではない、広域をひとつに括る「東北」という言葉を、すでに私たちの大学は抱いているではないか。
大学は、専門の基盤を培う場所である。しかし東北大学はここで、専門を基盤に持つもの同士が交流することもサイエンスの一部であると宣言しているわけである。これは自然科学の方法論だけで処理できることではない。次の100年間で本当に東北大学がやらなければならないのはここではないでしょうか、井上総長。
本日は知能ロボットコンテストの本選。日本でいちばんおもしろいロボット競技会です。
「小説宝石」誌でモロッコ旅行や飛行機免許取得などの話を綴ったエッセイ連載が始まりました。
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瀬名秀明の課外ゼミ[flight]+東北大学キャンパス散歩
2007年06月24日
2007年06月19日
仕事
【書評】朝日中学生ウイークリー/2007.1.21号/ブックパラダイス/「天才物理学者に女子大生が向き合う」p.20/連載第10回
【書評】朝日中学生ウイークリー/2007.2.18号/ブックパラダイス/「科学と芸術が結びつく「錯視」の魅力」p.15/連載第11回
【書評】朝日中学生ウイークリー/2007.3.18号/ブックパラダイス/「ビッグバン理論から最新の宇宙論へ」p.15/連載第12回
【書評】朝日中学生ウイークリー/2007.4.15号/ブックパラダイス/「科学者が「幻のウナギ探し」」p.14/連載第13回
【書評】朝日中学生ウイークリー/2007.5.20号/ブックパラダイス/「天から新作ノンフィクション」p.15/連載第14回
【書評】朝日中学生ウイークリー/2007.6.17号/ブックパラダイス/「数学好きの少年と謎解き体験」p.15/連載第15回
【プレスリリース】東北大学工学部/2006.1.12/「SF作家瀬名秀明博士の特任教授(SF機械工学企画担当)就任に関する記者発表 100年後を見据えた東北大学工学部の試み」
【インタビュー】論座/2007.5/本棚拝見55/(無記名)「瀬名秀明」pp.17-19
【講演録】仙台文学館ニュース/第十一号(2007.3.31発行)/「トークイベント 「科学と小説の翼を持って」」pp.4-5
【鼎談録】綾辻行人、瀬名秀明、宮部みゆき『贈る物語 刊行記念鼎談 【新装文庫版】』/2007.3.10/光文社/非売品(限定1,000部)
【インタビュー】東北大学生新聞/2007.4.20号(第335号)/創立100周年に向けて 東北大学への期待8/(無記名)「心豊かな科学者を東北大から」p.8
【インタビュー】『映画ドラえ本 のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使い 公式ガイドブック』/小学館/2007.3.15/ISBN978-4-09-106354-0/本体1143円/原作漫画 大研究3/取材・文=角山祥三、撮影=朝倉秀之「物語のおそろしさ≠ニ面白さ≠教わりました」p.98
【出演】東北大学薬学部紹介DVD2007/制作:株式会社アドックス/非売品
【インタビュー】Tech総研/2007.4.10/技術に携わる人へ 元エンジニア作家推薦の小説20冊0/高橋マサシ、タニー只野「エンジニアの内面をくすぐり、刺激する小説」 *瀬名は元エンジニアではないので、この総タイトルは誤り。
【エッセイ&ショートショート】バイオテクノロジージャーナル/2007.5-6/羊土社/ISBN978-4758102018/本体2500円/科学する物語・空想する科学/第3回「ファントム・ペインの時代を超える」pp.338-339 【amazon】【bk1】【広告】 *TVドラマの『600万ドルの男』と『バイオニックジェミー』を紹介。
【エッセイ&ショートショート】バイオテクノロジージャーナル/2007.7-8/羊土社/ISBN978-4758102025/本体2500円/科学する物語・空想する科学/第4回「あなたに真夏の細胞のひかりを伝える」pp.450-451 【amazon】【bk1】【広告】 *クオリアの話と山川方夫「夏の葬列」。
【書評】朝日中学生ウイークリー/2007.2.18号/ブックパラダイス/「科学と芸術が結びつく「錯視」の魅力」p.15/連載第11回
【書評】朝日中学生ウイークリー/2007.3.18号/ブックパラダイス/「ビッグバン理論から最新の宇宙論へ」p.15/連載第12回
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【プレスリリース】東北大学工学部/2006.1.12/「SF作家瀬名秀明博士の特任教授(SF機械工学企画担当)就任に関する記者発表 100年後を見据えた東北大学工学部の試み」
【インタビュー】論座/2007.5/本棚拝見55/(無記名)「瀬名秀明」pp.17-19
【講演録】仙台文学館ニュース/第十一号(2007.3.31発行)/「トークイベント 「科学と小説の翼を持って」」pp.4-5
【鼎談録】綾辻行人、瀬名秀明、宮部みゆき『贈る物語 刊行記念鼎談 【新装文庫版】』/2007.3.10/光文社/非売品(限定1,000部)
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